香港には新界と呼ばれる地区がある。名前の通り、最近になって開発が進んでいる九龍より更に北にあるエリアのことで、実に香港特別行政区の総面積の90%を占める。
実は当初訪れる予定はなかったのですが、空港滑走路から見えた新界の街並みに圧倒され、訪問を決定した次第です。

そんな訳で、香港歴史博物館を出た所からスタート。
MTR屯馬線で新界へ
紅磡駅


香港歴史博物館の最寄駅・紅磡から乗車。この駅のペデストリアンデッキから見られる景色もなかなかのものである。


茶色のラインカラーの屯馬線・屯門行きに乗車し、一路新界へ。途中の荃灣西を出ると、次の錦上路まではグッと駅間が開き(9㎞)、一気に新界に入る。


香港島や九龍半島では見ないような未開の森林・緑が広がっているのが新界。開発が進むとは言うものの、まだまだ取り残されているところが多いようだ。
MTR天水圍駅
そして紅磡から30分弱、終点から2つ手前の天水圍で下車。

日本語読みだと「てんすいい」駅。広々としていて開放感のある立派な高架駅だ。この地区の人口も多いためか、列車も5~7分間隔で運行されており、利用客も多い。
ここまでの運賃は$21.8≒440円。阪急の大阪梅田~京都河原町よりちょっと高いぐらい。

駅を出ると、早速高層アパートが何棟も出現。
特別行政区で高度な自治権が付与されているとはいえ、あくまでも香港は中華人民共和国の一部。この無機質で画一的なアパートがボンボン建っているのを見ると、やはりどこか共産圏のような雰囲気を覚える。

そんな無機質な高層アパート群を背景に、颯爽と駆けていくのが今回の主役・輕鐵(ライトレール)だ。
輕鐵(ライトレール)に乗車
輕鐵とは?
そもそも、輕鐵(ライトレール)とは何か?
これは香港・新界北西部を走る交通システムのこと。トラム(路面電車)と一般鉄道の中間のような存在。


その内、天水圍周辺の路線は上の画像の通り。環状線のようになっており、「天水圍循環綫(Tin Shui Wai Circular)」という路線名が振られている。駅名にやたら「天」が付いているのが特徴。
天水圍駅から直接輕鐵の駅に繋がっていたのに気づかず、MTR天水圍駅から1駅先に進んだ天耀駅から乗車。



天耀駅に停車中の輕鐵の車両。このホーム同士が構内踏切で繋がっているローカルな感じがたまらない。
乗り方
輕鐵に乗る際は、ホーム入口の機械にオクトパスをかざして乗車し、降りた駅で同様の機械にかざせば自動的に運賃が引かれる仕組みになっている。乗るときと降りるときで機械が違うので注意。

日本のローカル線にもある、ICカード専用の簡易改札機と全く一緒だ。
紙のきっぷを売る券売機は見当たらなかったので、恐らくオクトパスを前提とした利用しかできないのかも。

という訳で早速761P系統・天逸行きに乗車。

車内はこんな感じ。2両編成で、編成間の通り抜けはできない。
特筆すべきなのが、片側(左側)にしかドアが付いていないこと。これは輕鐵の全ての駅が対面式ホームであり、かつ折り返す際はループ線を回るためである。つまるところ、香港中心部を走るトラムと同じ運行スタイル。
高層アパート群と輕鐵を撮影
天逸駅

終点の天逸駅で下車。
天逸は天水圍循環綫内のターミナル駅。体感で約半数の列車が当駅で折り返していく…ような気がする。

この駅終点の電車は、このようにループ線をくる~っと回り、折り返し天水圍方面のホームへ入っていく。
それにしても背景の高層アパート群の主張が強い。こういう無機質な建物群を、英語のスラングでは“Commie Blocks(共産圏の団地)”というらしい。確かに旧ソ連や東欧に残っていそうな雰囲気である。ヨーロッパだとここまでの高さと密度ではないかもしれないけど。

この駅のポイントは、駅北側の立体駐車場から駅を俯瞰撮影できること(一枚前の写真の右側)。


天水圍循環綫は白い車体の新型車が圧倒的多数を占めているものの、たまに来る青と銀色の旧型車がエモい。


駅南側の歩道橋からも撮影。バカが考えたサイズのような建物(失礼)に比べると、輕鐵の車両は最早ミニチュア同然。この対比もまた面白い。


建物の形は十字型で、外壁の色使いも中々独特で奇妙な雰囲気を思えるのが、この新界の高層アパート群。数えた所、ほぼ全ての建物が40階建て。何部屋あるのか分からないが、ここに映っている建物だけで1万人ぐらいのキャパシティーありそう。
天悦駅


再び環状線に乗車し、4駅先の天悦駅で下車。

この駅の南側にまた歩道橋があったので、上から撮影。
この辺りをフラフラ歩きつつ、撮影スポットを探してみることに。

天悦~天秀間にある歩行者用地下道を抜けた先にある踏切の所がちょうど良さげだったので、この辺りでカメラを構えることにした。


ちょうど反対側から同時に来たので一緒に撮影。縦構図で縦に長いアパートと輕鐵を何とか収められたので、個人的には満足。
鉄道撮影は今回の香港が初なので、写真のクオリティは大目に見てやってください。
香港の銀座駅?
そしてもう一つ、路線図を見て気になっていた駅がある。その名も「銀座」駅。突然の日本要素で本当に謎なのだが、せっかくなので降りてみることにした。

銀座駅。ちなみに車内放送の自動放送は普通に中国語読みだった。

駅周辺の高層アパートは基本形である十字型の構造は崩さず、かつ天逸駅や天悦駅周辺によく見られたのっぺりとした造形のものとは異なり、シルエットが強調されていて緩急が付いているのがまた趣深い。
一口に「共産圏のような無機質な建造物」とはいっても、割とバリエーションがあるのだ。

あとはショッピングモールがあったり。特に日本の銀座要素はなかった。

輕鐵・天水圍駅
天水圍循環綫をほぼ一周し、MTRの乗換駅である天水圍駅まで戻ってきた。


輕鐵の線路はMTRの高架ホームの下をくぐるように敷かれており、ホームもこのような構造になっている。


天水圍循環綫、英語で略すと“TSW Circular”。


駅手前はこのように下り勾配になっているので、高架柱と一緒にいい感じに撮影することができる。
という訳で、今回の輕鐵撮影は終わり。今度は新界で天水圍循環綫の他にもいろいろ行ってみたいなあ。
夜はまた別に行きたいところがあるので、市街地に戻ることにした。
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