黄河の流れる街・甘粛省の省都蘭州を歩く【ユーラシア大陸陸路横断記#15】

2025年11月20日(木) 天気:晴 気温:5℃/-1℃

横になれるだけありがたい…とは言ったが、硬臥車は中々寝付けない。結局3~4時間ぐらいしか寝られなかった気がする。修業がまだまだ足りないようだ。

蘭州へ

時刻は7:30。列車は甘粛省に入り、荒地を走り続けている。時折、車窓に雪がチラつくようになったのを見て驚いた。確かにこの頃かなり気温が下がり始めたが、そこまで気温が落ちたか…?と思い調べてみると1℃の表記。マジかよ。

そう、蘭州は標高1600m。中国西北地域の高原地帯に位置しているため、冬の寒さは厳しいのだ。

そして列車は8:30、中国国鉄にしては珍しく20分遅れて蘭州駅に到着した。列車を降りるとキリっとした冷気と乾燥した空気に包まれる。あまりに寒いので慌てて圧縮袋に入れていたダウンジャケットを取り出して羽織った。ああ、これから冬本番の旅行が始まるのか…

出口に向かう途中、マフラーを車内に忘れたことに気が付いた。急いで戻るが列車のドアは既に締まっており、どうにもできない。近くにいた強面の駅員にジェスチャーで「マフラーを忘れた!」と伝え取り合ってもらう。幸い清掃員の人が車内にいたので取り戻せたが…

蘭州駅。デカい。
蘭州の駅前。

これまで巡ってきた青島、上海、そして成都よりはかなり規模の小さい街だと認識していたが、それでも総人口は約435万人と、日本で最も人口の多い市である横浜市の約375万人を優に超える。勿論、市域面積もとんでもなくデカいが、やはり中国はそもそもの母数が違う。

ところで、体調が優れない。喉は痛いわ鼻水も出るわ咳も止まらず…一旦駅前に押さえておいたホテルにチェックインして様子を見る。最初は荷物を置くだけの予定だったが、なんとまだ9時にも関わらずチェックインさせてくれた。しかも個室で1,900円とかなり安い。

熱っぽさとダルさはなかったので、そのまま観光することに。10時に再び街に出て、バスで黄河に架かる中山橋へ向かった(上手くアリペイから交通カードをダウンロードできず、もたもたしていると運転手から怒鳴られたが、なんとかWeChatから支払うことができた)。

黄河第一橋・中山橋

駅前からバスに揺られること40分、中山橋のバス停に到着。歩道橋を渡り橋のたもとに行くと、堂々とした「黄河第一橋」の石碑と立派な鉄橋が出迎えてくれた。

黄河とは四大文明の一つである黄河・長江文明を育んだ、中国史並びに世界史上でかなり重要な意味を持つ川だ。中国国内では長江に次いで2番目、世界でも6番目の長さを誇る。

「黄河第一橋」の名前の通り、この橋は黄河上に架けられた初めての鉄橋。1909年に完成しており、例のごとく孫文を称え「中山橋」という名前が付いている。

早速渡ってみることに。

それにしても黄河は名前の通り見事な黄土色をしている。初めはその色にぎょっとしたが、これは上流の削られた黄土が混じっているが故の色で、水質は問題ない…はず。

ちなみに、世界で一番土砂含有量が多い川だそう。そらそう。

ところで、土砂が堆積されると下流でデルタが形成されたり、川底に溜まって天井川になってしまうと思うのだが…このまま時間が経つとどうなるんだろう。

いずれにせよ、この流量の川が黄土色に染まっているのは圧巻の光景だ。

白塔山公園

中山橋を渡ったところには白塔山公園という公園があるので、とりあえず登ってみることに。蘭州のことはあまり調べていないので、目に付いたところにとりあえず行くのだ。

白塔山公園の入口。

この公園一帯は「金城関景区」という名前が付いている。「金城」とは蘭州の古名だ。

公園内で太極拳に勤しむ人民。

この公園は法雨寺、雲月寺といった多数の寺院が複合した歴史遺産。中でも著名なのが公園の名前にも冠されている白塔寺だ。

中山橋のたもとから見ると中々急峻な山のようにも見えるが、公園内には遊歩道が整備されており散策しやすくなってはいるが…階段も多く、軽い登山のようで結構疲れるのもまた事実。

公園内には明清代に再建された仏教寺院が立ち並んでおり、良い雰囲気。

そして、これが白塔寺。

元の時代にチベットからチンギス=ハンに謁見するためモンゴル帝国へ向かっていた途中、蘭州で客死した高僧を悼んで建立されたという逸話が残っている寺だ。

寺の名前にもなっている白塔は、敷地中央に堂々と鎮座。高さは17m、八面七層のその塔は、中国の多層楼閣を思わせる特徴もありながら、チベット仏教で見られる仏塔のような特徴も持ち、ここが文明の交差路であることを感じさせてくれる。

そう、ここはシルクロードの交通の要衝・蘭州なのだ。

白塔寺からは蘭州の街並みと雄大な黄河を望める。

中華文明はこの大河から始まり、支えられてきたのかということを、改めて実感できる。

揚水水車。

下山後は少し川沿いを散歩してから中心市街へ戻った。

「黄河は中華文明のゆりかご」という名言?に基づいて造られた「黄河母親」彫刻。甘粛省の文化財。

蘭州牛肉麺

さて、蘭州に来た最大の目的、それは本場の蘭州牛肉麺を食べること!

街の中心部で早速店を探してみることに。

流石は本場、街に出れば視界には大量の牛肉麺屋が…ある訳ではなく、なんと大通りには意外と店がない。見落としているだけかもしれないが。

夜市のあたりを適当に歩いていると、ようやく見つけたので早速入店。

店に入ると入口横にカウンターがあり、座席に着く前にここで注文を済ませるスタイルのよう。早速おばちゃんが「牛肉面ニウロウミェンか!?小菜シャオツァイは付ける?トッピングは?」と怒涛の質問攻め。とりあえず単品で頼んで渡されたレシートを調理場に持って行くと、ここでも何やら聞かれるが、よくわからないので適当に頷いていると何とかなった。

ちなみに、横に麺の太さの表が貼ってあったので、多分これを聞いていたんだろうなあ。やはり少しは中国語を勉強してくるべきだった…

しばらく待っていると「出来たぞ!」とまた調理場から声がかかるので取りに行くと、間違いなく辛いであろう真っ赤な液体をなみなみに手に取り、「どうする?」と聞いてくる。「一、一点儿イ、イーディエン」とビビりながら少しだけ入れてもらった。

これが蘭州牛肉麺。特徴は「一清二白三紅四緑五黄」と呼ばれるもので、それぞれ「一清」=澄んだスープ、「二白」=白い大根、「三紅」=紅い辣油、「四緑」=緑の香菜、「五黄」=黄色く艶やかな麺のこと。

蘭州牛肉麺の5つの要素(黄河楼にて)。

牛骨から取ったスープはあっさりとしていながらもコクがあり、それに辣油がアクセントになっていてかなり美味しかった。

なんと、これがたったの8元(≒180円)で食べられてしまう。実は蘭州のある甘粛省は中国国内でもかなりGDPが低い地域で、沿海部の都市と比べると5~13倍もの差があるらしい。飲食店が安いのも、そんな理由があるのだろうか。

(なお、2026年9月に中国を再訪したが、ただの牛肉麺ならどこもこのぐらいの値段だったので、多分あまり関係ない)

黄河楼

さて、牛肉麺を食べた後にどうするか、何も考えていない。

調べると、黄河沿いに黄河楼なるものがあるらしいので行ってみることにした。蘭州にも地下鉄はあるが、これまで訪れた青島や上海、成都ほど発達していないので、移動は専らバスになる。

地味に市内中心部からは遠く、1時間ほどかかった。

黄河楼とは名前の通り、黄河のほとりに立つ楼閣建築。建築こそ伝統的な楼閣建築だが、2012年に建築された真新しい観光スポットだ。

建築を模した謎技術アイスも食べてみたり。

入場料は30元。一番上まで登ってみると、蘭州の街を四方から見渡すことができる。白塔山公園からの眺めも素晴らしかったが、たまにはこういったタワーに登って見てみるのも良いものだ。

黄河楼の中はちょっとした博物館になっており、黄河文明の歴史が紹介されていたり、流域で発掘された化石の展示や蘭州に関連したストーンアートが展示されていたりと、中々楽しめる。

黄河の紹介。黄河は青海省にある水源から四川、甘粛、寧夏、内モンゴル、陝西、山西、河南、山東の計9省級行政区を通過し、中華民族の母なる川である…と書かれている。
習近平総書記のありがたいお言葉。

時刻は18時。いい時間になったので、宿に戻りがてら最後に夜の中山橋に立ち寄ってから帰ることにした。

去り際に、ライトアップされた黄河楼が見えた。

夜の蘭州市街を散策

中山橋に着くと、ライトアップされた橋に金色に輝く背景の白塔山公園が非常に映える。

中山橋のライトアップの色は割とな頻度で変わるのだが、どういうセンスでその色をチョイスしたのか聞きたくなってしまう色もあったりするのは面白い所だ(写真のようなオレンジや赤系統の色なら中国の伝統色でもあり景色にも映えるのだが、青やピンクはちょっと…)。

まあ、これはこれで趣がある…のか?

ところで、夜に蘭州を歩いていると気になるのが、道端で何かしらを燃やしている人々の姿。

それも、1人だけではなくかなりの数を見かける。蘭州はチベット仏教やイスラム教などの習俗が入り混じる街。この焚火も、何かしらの宗教的な儀式なのかもしれない。

まあ、ただ暖を取っているだけの可能性も無くはないけれど。

しばらくそんな様子を観察してから、バスに乗って宿に戻った。外が寒かったのであまり気にならなかったが、結構な寒気がする上、じっとしていると暑くて仕方がない。体温は測れなかったが、体感38℃は超えていそうな雰囲気だった。

とりあえず、しこたま水を飲んでからさっさと横になった。

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