2025年11月14日(金) 天気:晴 気温:20℃/15℃
新場古鎮
前日は南京路歩行街に外灘の摩天楼やコロニアル建築を見物して、世界都市・上海の威光をまざまざと見せつけられたことから、この日はのんびりと郊外を歩くことに。
中国には「古鎮(gǔ zhèn)」と呼ばれる伝統的な街並みが残されている歴史地区が各地に存在している。上海近郊だと朱家角(Zhūjiājiǎo)古鎮が一番名高く、更に近隣都市の蘇州まで足を伸ばせば、見事な水郷が広がっている。いずれも、長江下流に位置する水運で栄えた街・地区であり、これらを総称して「江南水郷」と呼ばれるものだ。

で、今回訪問するのは朱家角でも、はたまた蘇州まで足を伸ばすわけでもなく、新場古鎮。規模的には勿論前述の2つの方が大きく、知名度も抜群なのだが…謎の逆張り精神を発動させてしまうのは、自分の良くない癖ではある。
ドミの最寄の南京西路から地鉄2号線に乗車。そこから龍陽路(龙阳路)駅で16号線に乗り換え、新場(新场)駅で下車、更にバスを乗り継いで行く。

中心部から1時間ちょっと、空港名でよく目にする浦東新区までやってきた。


更に最寄りのバス停で下車して歩くこと数分、住宅街が広がる何の変哲もない街並みだが…

突然立派な石造の牌坊が現れる。これが新場古鎮の入口だ。
ちなみに牌坊とは中国の伝統的な建築様式で建てられた門のこと。日本でも中華街でよく見られますが…大体赤く塗られ装飾が施されているので、この様に無骨な石造りなのはあまり見慣れない。
ちなみにこれは近年再建されたものだそう。

先ほどの門から新場大街というメインストリートに入ると、昔ながらの木造建築が並び、両サイドに食べ歩きを楽しめる飲食店が所狭しと入居している。


朝から何も飲んでいなかったので、果物を生搾りしてくれるお店でオレンジ100%のジュースを買って歩くことに。

冒頭でも述べた通り、中国の江南地域一帯では水路が張り巡らさせた水郷となっている古鎮が多く、新場古鎮もその例。

この様に水路の際まで建物がせり出しており、非常に良い景観だ。

新場古鎮の歴史は南宋の時代(1128年)まで遡る。当時の製塩場である下沙塩場が移転して作られたのがここで、新しい製塩場ということから「新場」という名前が付いたのが始まり。

その後の明や清の時代でも塩商人が集まり、そこから街が発展し、江南地域でも有数の街になった…というのがこの新場古鎮のざっくりとした歴史の流れ。
当時は「十三牌楼九环龙,小小新场赛苏州(13の牌楼と9の環龍、小さな新場は蘇州にも勝る)」と称されるほどの規模だったそう。

蘇州といえば世界遺産にも登録されている著名な水郷だが、それすらも凌駕するものと評されていた当時の新場の賑わいはいかほどだったのか…気になるところですね。

更に新場古鎮の良いところは、中国でよく見られる過度な観光地化が進んでおらず、この様に旅遊区の中にも普通に住民の暮らしがあり、洗濯物が干されていたりと伝統家屋が「生きて」残されていること。

伝統を守りながら生活をしている人民の暮らしが垣間見える、非常に良い古鎮だ。




最後は川沿いに続く回廊で少し休憩してから新場駅へ戻る。なんだかんだで3時間ほど散策していた。
周浦老街(小上海歩行街)
さて、宿に戻る前にもう一つ寄り道。せっかく中国に来たのだから屋台飯を楽しみたい!でも上海中心部には屋台が無い!ということでやってきたのがこの「周浦老街(小上海歩行街)」。
新場からは16号線で羅山路、乗り換えて11号線で御橋、更に乗り換え18号線の周浦駅で下車し、そこから10分ほど歩いたところに歩行街はある。

老街の入口では飛檐という反りあがった軒先と臙脂色の塗装が特徴的な中華様式がお出迎え。これは後世に建てられた商業施設だとは思うが。

老街に入ると、まさしく求めていたディープな風景が広がっていて嬉しくなってしまう。軒先では色とりどりの果物が並べられ、様々な匂いが混ざり合うカオスな空間…発展著しい上海にもまだまだこんなローカルな雰囲気が残っているところがあって良かった。

小吃(屋台で売ってるような手軽な一品料理)の選択肢も豊富。焼き牡蠣・ホタテにスパイシーチキン、炭火焼豚足に加え、麻辣風味の羊の足なんてのも売っている。
ここでは前日に食べて微妙だった上海炒麺にリベンジ。野外に調理場を構えている老板に「チャオミエン!」と注文すると、中華鍋に卵を溶き、様々な具を入れてから火力を増して手慣れた手つきで炒めていく。

最後に麺を入れてソース上手く絡ませて完成。
店内でも食べることはできたが、せっかくなので持ち帰りにして屋外で食べることに。

これが出来立ての上海風焼きそば。昨日のボソボソとした麺が噓のようにモチモチで、程よく唐辛子の辛みが移っていて箸が進んで仕方がない。これが13元(≒280円)なんて信じられるか?
やはりこの手の料理はローカルな場所で食べるに限るぜ。


老街をもう一回り、二回り…何を食べようか本当に目移りしてしまう。

軒先の看板にめちゃくちゃ惹かれた鶏ももの屋台。辛さの段階だが、变态辣(常軌を逸した辛さ)の説明書きに「狠心辣嘴 残酷无情」と書いてあるのが非常にツボ。「残酷無情」って概ね食べ物に使う言葉ではない。
それで結局もう一品食べたのは「武漢熱乾麺(武汉热干面)」。また麺かよ!
ラー油を指差され辛さをどうするか聞かれたので、これもまた覚えておいた「微辣」と返す。字面で分かるが、ピリ辛ぐらいの辛さという意味。文字で見れば分かるものの、発音は覚えていないと手も足も出ない。中国語のもどかしさだ。

武漢熱乾麺の特徴といえば、芝麻醤が使われること。香ばしいゴマの風味に辛さが乗っかって非常に美味しい。これを朝に食べるのが武漢人にとっての日常らしい。
これを朝から食べるのは少々重い気もしなくもないが…でもスタミナは確かに付きそうだ。

また少しぐるっと一周してから周浦の駅に戻る。
貴重な上海の屋台街、これからも末永く残っていてほしいものだなあ。
豫園商城
さて、中心部に戻ってきたので、今度はまたキラキラとした上海に身を投じる。
「豫園」といえば明代に造られた美しい庭園だが、その周りには「豫園商城」と呼ばれる繁華街が広がっている。今回はそんな商城区画を少し歩いてみることにした。


さて、この商城の凄いところは、明代の建築を再現した建造物が所狭しと並んでいるところ。


当たり前だが、これも後世に建てられたもので、中国の激しい観光地化政策の最たる例といっても過言ではないだろう。ただ、いくら頭では作り物だとはわかっていても、このクオリティと風景には流石に圧倒される。


これは「湖心亭」という上海最古の茶楼。近代になって開発された商城だが、これは清朝時代の1855年に建てられた歴史ある建築物だ。


確かにテーマパーク感は物凄くするのだが、それを差し置いてもやはりこの建築には圧倒される。訪中が初めてだからというのもあるかもしれないが、上海という街のエネルギーを感じ取れるスポットといえば、それはそうなのかもしれない。

最後に外灘に寄り道して帰る。
やはり川に沿って並び立つコロニアル建築は圧巻だ。

世界最大級の金融都市である上海に、昔の面影を残す上海…後者の意外な一面性が垣間見えた良い1日だった。


