成都で本場の麻婆豆腐を実食&老子の伝承が残る青羊宮へ【ユーラシア大陸陸路横断記#11-1】

2025年11月16日 天気:曇時々雨 気温:17℃/11℃

寝台高鉄で成都東駅へ

22時過ぎ、徐州東駅で眠りに着いた後、3時ごろに目を覚ますとどこかの駅に停車中だった。しかし、23:51に鄭州(郑州ヂェンヂョウ)東を出た後は、5:28着の西安北駅まで止まらないはず。きっと時間調整していたのだろう。

次に目を覚ましたのは7時過ぎ、広元クワンユエンに着く手前だった。

広元駅。

それにしても、時速250kmで夜通し移動し続けているというのに、車窓から国土と街が途切れることなく流れ続ける様子は圧巻で、まるで実感が湧かない。まるで夢でも見ているような…そのスケールの大きさに畏怖すらも覚える。

四川盆地を駆け抜けていく。

そして上海虹橋駅を出て14時間17分、9:01に四川省の一大高速鉄道ターミナル駅である成都東チェンドゥドン駅に到着した。

列車は宜賓行きだが、大多数の客が成都東で降りていった。

これが成都東駅の駅舎。ひたすらにデカい。

中国では既存の都市郊外に高鉄の駅を建設し、そこで新たに住宅街や商業施設を整備して新たな市街地を形成するという開発手法がよく取られる。

成都東駅の開業は2011年とかなり最近。駅前からは建設中の高層マンションの様子も窺え、まだまだ開発が進んでいるようだ。

市街中心部へ

さて、今日の宿は成都の一大繁華街である春熙路チュンシールーの近く。

成都東駅から市街中心部の春熙路や天府広場に向かうには、地鉄2号線に乗る必要があるので、まずは地鉄乗り場へ。

これが地鉄の乗り場。案内サインに強烈な既視感を覚えると思ったら、JR東日本のそれにそっくりだ。

なんと、このサインはJR東日本の案内サインを手掛けた会社と同じらしい。どうりで。

路線図。「一品天下」という駅名に、京都で大学時代を過ごしていた筆者は目を奪われてしまった。

成都東駅から春熙路までは6駅だ。

改札内では麻辣王子の広告がジャック。「本場の麻辣だけを作る。甘い辣条(麻辣王子は「辣条」というスナック菓子)は作らない」「四川料理の名匠と辣条の開発者がタッグを組んで発明」とのことで、流石は四川省。

駅を出て太古里タイクーリーを西へ。今日の宿は春熙路と天府広場の間にある、雑居ビル内のドミトリーだ。

部屋はこんな感じで普通に綺麗なのだが、値段はなんと1泊650円。こんな破格な値段で宿泊できるのは中々凄い。

天府広場

さて、時刻は10時。昼食にはまだ早いので、宿から天府広場まで散歩してみることにした。

重慶小麺や今日本で何故か人気の麻辣湯など、四川地域を代表する料理を出す屋台が並ぶ。

春熙路から天府広場まで向かう途中にて。成都はどこでもパンダ推しだ。

歩くこと15分ほどで広場に着いた。

これが成都の中心部である天府広場。成都含む四川盆地は、古くから「天府之国(天から授けられた肥沃な土地)」と呼ばれた土地で、「天府」という言葉はこれに由来するものだ。

ちなみに、在重慶日本国総領事館によると、

「四川省科技館の前に立つ高さ30メートルの毛沢東像と、その目の前に一直線に延びる広い道路(人民南路三段)が印象的。他には特段、広場自体に見るべきものはない。」

在重慶日本国総領事館HP「天府広場」より

…だそうです。

これがその毛沢東像。
広場から眺める成都中心部のスカイライン。

それにしても、内陸部にこんなにも巨大な街があることに驚きを隠せない。現在、成都市の人口はなんと1600万人を超えており、副省級市(日本の政令指定都市的なイメージ)に指定されている。岷江を利用した大規模な灌漑が整えられた四川盆地は農業に適しており、古くから人が多く住んでいたようだ。

基本的にどこの国も大都市というのは沿岸部や大河川に接続できる土地に出来やすいが、成都は肥沃な土地に支えられた例外的なメガロポリスなのだ。

麻婆豆腐発祥の店・陳麻婆豆腐

さて、ちょうどよくお腹も空いてきたので、成都に来た目的の一つである「本場の四川料理を食べる」ために、まずは陳麻婆豆腐というお店へ。

先ほどのスカイラインとは打って変わってローカルな雰囲気が広がる路地。

陳麻婆豆腐は麻婆豆腐発祥の店。日本にも多くの店が暖簾分けで出店しているが(大阪だとルクアイーレにあったり)、やはり本店で食べたい!

正確には本店ではないらしい、天府広場から一番近い陳麻婆豆腐のお店。

という訳でやって来た念願の陳麻婆豆腐。実は辛い料理が好きで、成都滞在中はしこたま四川料理を食べてやろうという野望を叶える為の第一弾だ。

立派な門構えで入るのを少し躊躇ってしまうが、2階に上がるとすぐに席に案内してくれた。

内装も立派。

メニューは当然全て中国語だが…「金牌麻婆豆腐」「米飯」を注文。こういう時に漢字が読めるって素晴らしいことだなあ。

まずは米がやってくるが…量が多い!まさか2合弱はあろう「おひつ」で出て来るとは思わなかったので、ここでフードファイトが決定してしまった。

そしてメインディッシュの麻婆豆腐が運ばれてくる。

釜に入った麻婆豆腐は、地獄のように赤くグツグツと煮え立っている。これが四川本場の麻婆豆腐…!

覚悟を決めて口に運ぶと、唐辛子由来のヒリヒリとした辛さの後に、花椒のジワジワと痺れる辛さがやってくるという辛味の波状攻撃。

しかし、辛味の中にも確かな旨みが間違いなくあり、白米が進んで仕方がなかった。あの量はこれを見越してのものだったのか。

卓上には菊花茶が置かれており、タダで飲み放題。麻婆豆腐→白米→麻婆豆腐…のループの間にこれを差し込むと口がサッパリし、無限機構の完成だ。

時代に指先や顔面も痺れてくるほどの辛さだったが、美味しく完食することができた。菊花茶で辛さを鎮めつつ、本場四川で麻婆豆腐を食べられた事の喜びを噛み締めた。

お値段は麻婆豆腐が26元、米が2元。締めて28元(当時のレートで約500円)だった。

老子の伝説が残る道教寺院・青羊宮

かなり満腹になってしまったので、適当に成都市街を散歩。文化公園でふらっと歩いた後に横にある青羊宮に入った。

文化公園は思想が強そうな公園だった。
かと思えば普通の庭園もある。

青羊宮せいようきゅう」という名前はその昔、道教の祖である老子がこの地に青い羊を連れてきてやってきたという中国の故事に由来する。周の時代、つまり老子との関係性を考えれば紀元前500~200年には既にルーツとなる寺院が建てられていたということになるが…果たして。

一応、現存する建造物は1700年代の清朝時代に再建されたものだそう。

主殿である「三清殿」。

青羊宮は道教寺院。パッと「道教」と一言で聞いても「はて…?」となってしまうが、要は中国古来の神仙思想(不老不死の仙人となり、理想郷で暮らすことを希求する思想)や民間信仰等の様々な要素を取り込んで形作られた宗教のこと。

道教の「タオ」は万物の根源のこと。この「道」に従い、人間の欲望や作為によって無理に物事を動かさず、自然のまま生きる「無為自然」という考え方が老子の思想で有名なものだったり。

そんな老子がここで説法を行った…との伝承も残されているものの、あくまでこれも真偽不明。

堂内にはお香の香りが立ち込め、たまになる鐘の音ですっかり心が穏やかに…ああ、やっぱり自分は東アジアで暮らす人間なんだと実感させられる瞬間だ。

建物の独特の色使いや、仏像とはまた異なる金色の仙人増が複数立ち並んでおり、これにも圧倒される。

地元の人と思しき人の礼拝をよく観察してみると、座布団に膝をつき、手を合わせながら土下座するような礼を3回繰り返していたので、自分もこの先の旅路の平安を祈念して同じように礼拝することにした。

また、青羊宮を構成する建物には、入母屋造の力強い建造物が非常に多い。これにもまた文化の連続性を感じて良い。

内陸の大都市・成都のど真ん中に佇む青羊宮だが、観光客もそこまで多すぎる訳でもなく、落ち着いた雰囲気の中で道教の世界観に触れることができる。

1時間強滞在して、次は杜甫草堂に向かった。

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